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海賊船の帽子のはなし1

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昔話をするわね。
ちょっと変わった話で面白いから、たぶんあなたも気に入ると思うのよ。


私のおじいちゃんは、腕の良い帽子職人だったので、
生きている内には沢山の帽子を作っていたらしい。
生涯、一体いくつの帽子を作ったかわかりゃしないっておばあちゃんは言ったものだった。
頼まれればどんな形の帽子も作れたらしい。

おじいちゃんが亡くなって、だれも入らなくなった作業場には
作りかけの帽子や材料や道具やら、色々ながらくたが沢山で
私はそこで何か面白い物を探すのが大好きだった。
面白いお宝は色々見つけたけれど、とっておきがこれだった。

海賊船の帽子。
海賊の帽子じゃないのだ、海賊のの形。
船なのだ、船。
それはとても良く出来ていて、豪華で、でも思ったよりは軽く出来ていた。

その頃の私は有名なカリブの海賊ジョン・カラムに凝っていた頃だったから
迷わずこれをかぶる事にしたのだった。
雰囲気を出すために、甲板にはその頃集めていた木の海賊人形を自分で乗せた。
お辞儀は出来なかったし、引っかかるしで結構不便だったけれど
歩けば人は振り返るし、どこにいっても注目の的だった。
大きな船の帽子だもの、当たり前だとは思うけれど。
とにかく私はものすごく気に入ったのだった。

毎日かぶって、いつも木の人形達と海賊ごっこしていたせいで
ある日、とうとう人形達までしゃべるようになってしまった。
歩いてても「北北西に進路を取れ」「おも舵いっぱい」だとか、それはそれはうるさい。
でもどんどん本物の海賊船らしくなっていくので、私は嬉しくてたまらなかったのだ。
自分の海賊船をもっているなんて、なんて素晴らしいのだろう!

この帽子を私が気に入ってかぶりだしたら、
おばあちゃんは思い出したように急につぶやいた。

「あぁ、懐かしいわね。それはじいさんのお気に入りだったんだよ。
そう言えば確かもう一体同じ様な海賊船の帽子を作って売った気がするわね・・・」

なんてことだ。もう一艘、海賊船がある!
と言うことは・・・
いつか海賊船の帽子をかぶった誰かさんと道でばったり会うのじゃないだろうか。
会ったら一体どうなるのだろう!!。
私の海賊達はかなり血気盛んで、他の船の略奪っていう事を一度実際にしてみたくて
ウズウズしているのだ。
何てことだ、どうしよう心配だ。

心配だ、心配だと思っていると、そういうことは本当になるものである。
つまり、だ。
とうとう道の向こうから、来たのだ。
もう一艘の海賊船が!


続きは「海賊船の帽子のはなし2」へ
by otegami-studio | 2010-04-12 06:50 | おはなし