持っていた「使いみちのない風景」3
ぐるりの話の続き。
こうして稲越巧一さんの写真と本のことをぼんやり思い出していた、
そんな年末のとある日。
ちょっとオシャレな老婦人と靴屋の店先で会いました。
老婦人は何か靴を探している様子。
ふと白いキャンバス地のデッキシューズに目をとめると
「あら!まだこの月星のデッキシューズってあるのねぇ!」と
嬉しそうに声をあげました。
わたしが「ええ、このデザインは昔からありますよねぇ」と言うと、
「私は真っ白なキャンバス地のデッキシューズを探しているのよ!」と
おっしゃいます。
「これはね、稲越さんがいつも履いていたのよね。
稲越さんって写真家の稲越さんよ。もうお亡くなりになったけど。
稲越さんってパーティーでもタキシードでもいつもこれ。
月星の白のデッキシューズを特注でロッド注文していたもんなのよねぇ」
「え?写真家の稲越さんって稲越巧一さんですか?
お亡くなりになったのですか?」
私は存じ上げなかったのですが、
写真家の稲越功一さんは2009年の2月にお亡くなりになっていたのでした。
「そうそう、お亡くなりになったのよ。」
「お知り合いだったのですか?」
「ええ、私、展示会とかパーティーに呼ばれる位の知り合いだったのよ。
それでね、いつも会うと、このデッキシューズ」
その老婦人は懐かしげにデッキシューズを見ると
「でも、私の探しているのは真っ白のデッキシューズなのよね。
これは生成だわね。
う~ん、じゃあリキテックス(アクリル絵の具)で塗っちゃえばいいかしらねぇ・・・」
しばらく眺めて悩んでいた様子でしたが、
結局、その月星のデッキシューズを買われて行かれました。
生成か白かの問題よりも
稲越さんの思い出の方が勝ったのかもしれません。
こうして稲越巧一さんの写真と本のことをぼんやり思い出していた、
そんな年末のとある日。
ちょっとオシャレな老婦人と靴屋の店先で会いました。
老婦人は何か靴を探している様子。
ふと白いキャンバス地のデッキシューズに目をとめると
「あら!まだこの月星のデッキシューズってあるのねぇ!」と
嬉しそうに声をあげました。
わたしが「ええ、このデザインは昔からありますよねぇ」と言うと、
「私は真っ白なキャンバス地のデッキシューズを探しているのよ!」と
おっしゃいます。
「これはね、稲越さんがいつも履いていたのよね。
稲越さんって写真家の稲越さんよ。もうお亡くなりになったけど。
稲越さんってパーティーでもタキシードでもいつもこれ。
月星の白のデッキシューズを特注でロッド注文していたもんなのよねぇ」
「え?写真家の稲越さんって稲越巧一さんですか?
お亡くなりになったのですか?」
私は存じ上げなかったのですが、
写真家の稲越功一さんは2009年の2月にお亡くなりになっていたのでした。
「そうそう、お亡くなりになったのよ。」
「お知り合いだったのですか?」
「ええ、私、展示会とかパーティーに呼ばれる位の知り合いだったのよ。
それでね、いつも会うと、このデッキシューズ」
その老婦人は懐かしげにデッキシューズを見ると
「でも、私の探しているのは真っ白のデッキシューズなのよね。
これは生成だわね。
う~ん、じゃあリキテックス(アクリル絵の具)で塗っちゃえばいいかしらねぇ・・・」
しばらく眺めて悩んでいた様子でしたが、
結局、その月星のデッキシューズを買われて行かれました。
生成か白かの問題よりも
稲越さんの思い出の方が勝ったのかもしれません。
by otegami-studio
| 2010-01-15 05:31
| おはなし