窓から手をふる

朝。
前を歩いていた中学生らしき女の子が
急に立ち止まって斜め上に向かって手を振りだした。

不思議に思って手の振る先をたどると
建物の角に後ろのマンションの端がちらと見える。
そのマンションの何階だかの窓から手を振る女の人の影が見えた。

(いってらっしゃい!)

お母さんが手を振っていた。

いいな、いいな、
窓から手を振るのはいいな。

行ってらっしゃいと玄関から送り出したその後も
数分後に通る道を窓から眺めていれば
もう一度、手を振り「いってらっしゃい」の合図が送れるのだもの。

急いでいて振り返る暇のない日もあると思うわよ。
喧嘩して窓から顔を出さない日もあると思うわよ。
うるさがって無視して振り返らない日もあると思うわよ。
具合が悪くて窓から顔を出さない家の人を思って、
出かける人だけが振り返る日もあると思うのよ。

きっと、二人で手を振り合う日だけじゃないのだ。

でも、お見送りの窓を持つ人は羨ましいなと
思った朝の出来事だった。

窓から手を振りたい。

「バイバ~イ!」

子どもの頃は道行く人にだれ彼構わず手を振った。
楽しかった。

「お~い!」
「バイバイ!」

誰かと目を合わせるのが楽しいのかもしれない。
手を振り返してもらうのが嬉しいのかもしれない。
窓は離れている人にも簡単につながる場所なのだ。
[PR]
by otegami-studio | 2011-05-01 06:25 | 備忘録