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わたしを取り巻くスパイな事々 2

前回に引き続いてもう1つのスパイ話。

昔むかし、わたしの知人で英語の堪能な女性がおりました。
彼女は確固たる信念の持ち主で、ファンシーな物が好きで
一風変わったファッションを貫いているような方でした。
お花の沢山ついた、大きなつばの帽子を斜めにかぶって
サングラスしてバッチリ決めちゃう・・・
そんなタイプの方だったのです。

その方となにかの事で雑談をしていたときに
旅行の話となって、その方は英語に堪能なだけあって
いろんな国へ旅していたのでした。
旅行先の土地のあれこれを話してくださるのも楽しかったのですが、
今でも鮮明に記憶に残っているのはこの一言。
「私ってスパイだと思われたのよ。」

友人達とグループで旅行することも度々、あったようなのですが、
大抵、入国の際に「こっちに来なさい」と彼女だけが別室に連れられて行って
質問やら持ち物検査やらをしつこくされてしまうのだそう。

「もう、大抵なのよ。それが。みんなを待たせてわたしだけチェックされるのよ。
 どうやら私の事をスパイだと思ってチェックしていたようなのよ」

彼女はとても真顔でジッとわたしの目を見ておっしゃいました。
たぶん、その奇抜なファッションで不思議に思われただけだとわたしは思ったのですが・・・
なにしろスパイというよりも何かの運び屋とかに疑われる方がまだあり得そう。

あんまり目立つから、何かをやる訳にはいかないと思うのです。
しかし怪しいと思われるには充分なのです。
きっと、その怪しさの解決を付けたいがために、色々チェックされていたのじゃないかと
わたしは思うのです。

だっていかにもスパイですって目立つスパイはいないです。
パン屋かフルーツ屋になってこっそり、人々に混ざらなくては。

でも彼女の重要な内緒を打ち明けるような口調の
「私、スパイだと思われていたのよ」
は国家機密の匂いがして、でも自慢げな感じも含まれていて
今でも耳をくすぐる秘密の言葉。

彼女が自分で「スパイ」だと名乗ってしまうように、聞いた私も
思わず「私、スパイの人知っているのよ」と話したくなっちゃうぐらいに
「スパイ」は吹聴したくなるような、あこがれの職業なのでした。

2つめのスパイのお話、これにておしまい。

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by otegami-studio | 2009-07-15 10:48 | おはなし